[2003-5-30]
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石の風車

[2003-5-19]  


岡山県のほぼ真ん中に 有漢町 という町がある。

“瀬戸内海と日本海の ちょうど中間” というと 中国山脈に囲まれた土地を連想しそうだが, それより “吉備高原 にひろがる町”と言った方が適当だろう。
高原の海抜は 400〜500mで 周囲の山は せいぜい600m級だから, “山国”という感じは全くない。
近くの 大平山は パラグライダーの基地になっている ということでわかるように, ゴツゴツした場所でなく, 緩やかな丘が連なっている という印象である。
中国自動車道と岡山道が合流する 北房ジャンクションから8km程南, 岡山自動車道には「有漢」というインターチェンジもある。
人口3千人足らずの 小さな町で, 気候は温暖。桃やマスカットなどの果物の産地。 穏やかに畑が広がっている。

そんな静かな町に 「うかん常山公園」という名前の公園がある。
「うかん」とは 有漢町 のうかん, 「常山」とは この公園のある小さな山の名前であろうか。
この公園には 大きな石で造られた風車が 風に吹かれて回っている。 「石の風車」 という名前にひかれて, ある晴れた一日 ここに行ってきた。

うかん常山 石の風ぐるま

うかん常山 石の風ぐるま

「石の風車」は “ふうしゃ” ではなく “かざぐるま” と読むのだそうである。
確かに “ふうしゃ”というと ドンキホーテに出てくる 大きな羽根の風車や, 最近増えてきた 発電用風車のような エネルギーのもとになる 大型の 力強い風車を思い出すが, この 石の風ぐるま は 形は大型だが, 羽根は相対的に小さく, 子どものころ 折り紙で作った おもちゃの風ぐるまを思わせるような, やさしくて 素朴な雰囲気である。

公園は 「風の舞台」と呼ばれる 全面芝生のゆるやかな丘で, 広さは 4000平米。 そこに 風車が 7基 建っている。 中央の風車は 高さ 5メートル, 羽根の直径は 2.5メートルある。
その他の 6基の風車は 中央の風車を守るような形で, 一列にならんでいる。
こちらは やや小型の羽根が 1〜4個 いろんな方向を向いて ついている。 台座は いずれも 自然石のまま ゴツゴツした肌をした 大きな石で, 重量は 20〜40トンもあるとのことで, 真下に立って見上げると いかにも大きい。


羽根の付け根

不思議なのは “どうして石の風車が回るのか”である。

最初 ここの風車の写真を見た時, まさか 石の羽根が実際に回るのだとは思わなかった。 せいぜい 台風並みの強風が吹いた時に わずかに ゴロゴロと石臼のような音を立てて 動く程度かと思っていた。
しかし現実に そよ風でも 滑らかにゆったりと回っているのを 自分の目で見てしまうと, その不思議さに 興奮してしまう。

風速 2〜3mの 「ススキの穂が揺れる程度」 の風で回る というのがうたい文句になっているが, 実際に私が行った時も 意識しない程度の風の中, 絶えず ゆったりと羽根が回っていた。
有漢町の説明には 「大きな自然石の風ぐるまが、そよ風程度の風でも回るメカニズムは、 制作者の“企業秘密”」と書かれているが, それ程大きな秘密が隠されている とも思えない。

風車の下に立って 羽根の付け根を見上げると, 左の写真のように 羽根と台座の石の間に わずかの隙間が見え, 中心に 金属の棒らしきものが 見られる。
当然といえば当然なのだが, 石の羽根は この心棒を中心に回っているのだ。
石をくり抜いて モーターを仕掛けている様子もなさそうだ。 風のエネルギーだけで回っているらしい。
あと考えられるのは 精密なベアリングで支えて スムーズな回転を助けている, それしか考えられない。・・・
このあたりの検証は 是非メカ屋さんの意見を聞きたいものだ。


中国山脈に囲まれた 高原を背景に 芝生の丘「風の舞台」が広がり, その中で 優しくゆっくりと回る 石の風車群の姿は 実に美しく, メルヘンのようで 楽しい。芝生に寝ころがって 風車が回るのを見ていると, いつまでも飽きることがない。
この素晴らしいアイデアは, “村おこし”の一環として 町の住民の議論の中で生まれた ものだという。
「うかん常山公園」を実現した 有漢町の皆さんに拍手を贈りたい。
ちなみに 「石の風ぐるま」は, 1997年度の 建設省主宰の「手づくり郷土賞」を受賞している。

参考までに, 石の風車の諸元は 次のとおり。

なお 最近になって, 石の風車は 有漢町だけでなく, 他にも 数か所に設置されていることを知った。
いずれも 作者は, うかん常山公園と同じ 門脇おさむ氏 とのこと。
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